営業マインドセット(第8回:顧客価値を発見)

 営業は商品価値を伝える仕事ではなく、顧客価値を発見する仕事である

営業研修でよく見かける光景があります。

営業担当者が一生懸命に商品の特徴を説明しているのです。

 高性能です

 高品質です

 業界トップクラスです

 他社より優れています

しかし、どれだけ熱心に説明しても顧客の反応が薄いことがあります。なぜでしょうか。理由は簡単です。顧客は商品価値そのものに興味があるのではなく、自社にとってどんな価値が生まれるのかに興味があるからです。

つまり営業の仕事は、商品価値を語ることではなく、顧客にとっての価値を発見することなのです。

・同じ商品でも価値は変わる

営業が理解しなければならない重要な事実があります。それは、価値は商品に存在するのではなく、顧客の中に存在するということです。例えば同じシステムでも、ある企業にとっては「業務効率化」が価値かもしれません。別の企業にとっては「人手不足対策」が価値かもしれません。また別の企業にとっては「属人化解消」が価値かもしれません。商品は同じです。しかし価値は違います。だから営業は商品説明よりも先に顧客理解が必要なのです。

・顧客はドリルではなく成果を買う

営業の世界では有名な話があります。顧客はドリルが欲しいのではありません。穴が欲しいのです。しかし実際にはそれだけではありません。顧客は穴が欲しいのでもありません。その穴によって実現する未来が欲しいのです。

例えば、

 売上を増やしたい

 コストを下げたい

 利益を増やしたい

 人材不足を解消したい

 市場競争に勝ちたい

顧客が購入しているのは、商品ではなく成果なのです。

・潜在課題を発見できる営業が強い

顧客が口にする課題は氷山の一角です。見えている問題の下には、もっと大きな本質的課題が隠れています。例えば、顧客は「新規顧客が増えない」と言います。しかし掘り下げると、

 ターゲット設定が曖昧

 営業プロセスが属人化

 提案力不足

 マネジメント不全

が原因かもしれません。

優秀な営業は、顧客自身も気づいていない問題を発見します。そして、「そこが本当の課題だったのか」という気づきを提供します。

・商品説明が長い営業ほど危険

成果が出ない営業ほど、商品の説明時間が長くなります。なぜなら、知っていることを話した方が楽だからです。一方でトップ営業は違います。商品説明の前に、徹底的に顧客を理解しようとします。なぜなら、価値が見つからなければ提案できないことを知っているからです。顧客価値を理解しない商品説明は、地図を持たずに目的地へ向かうようなものです。

・顧客価値は数字で考える

優秀な営業は価値を感覚で語りません。数字で考えます。

例えば、

 売上が何%向上するのか

 利益がいくら増えるのか

 工数が何時間削減できるのか

 ミスがどれだけ減るのかです。

顧客価値を定量化できる営業は強いのです。なぜなら顧客の意思決定は最終的に投資判断だからです。

・営業は課題発見業である

営業を販売業だと思うと限界があります。しかし課題発見業だと考えると世界が変わります。顧客が気づいていない課題を見つける。顧客が見えていないリスクを示す。顧客が想像していない可能性を示す。これが営業の存在価値です。単なる御用聞きではありません。顧客の未来を広げる仕事なのです。

・営業マネージャーが育てるべき能力

営業育成において管理職が注目すべきなのは、商品知識だけではありません。むしろ重要なのは、

 仮説構築力

 課題発見力

 業界理解力

 財務理解力

 経営視点です。

なぜなら顧客価値は商品から生まれるのではなく、顧客理解から生まれるからです。

・ 価値は創るものである

多くの営業は、商品の価値を説明しようとします。しかしトップ営業は、顧客と一緒に価値を創ります。顧客との対話の中で、

 こういう使い方ができる

 こんな成果が期待できる

 この課題も解決できる

という新しい価値を見つけていきます。

これが提案営業の本質です。

・本当に売っているもの

営業が売っているのは商品ではありません。ましてや機能でもありません。営業が売っているのは、顧客が実現したい未来です。その未来を具体化し、価値として見える形にすること。それこそが営業の重要な役割なのです。

 三流の営業は商品を説明する。

 二流の営業は価値を説明する。

 一流の営業は価値を発見する。

 顧客は商品の機能を買うのではない。

 自社の未来を変える可能性を買うのである。

 あなたは今日、商品を説明しただろうか。

 それとも顧客価値を発見しただろうか。

Evoto

営業マインドセット(第7回:納得を支援)

 営業は説得する仕事ではなく、納得を支援する仕事である

営業という仕事に対して、多くの人が抱いている誤解があります。

それは、「営業とは相手を説得する仕事である」という考え方です。確かに昔の営業では、話術や押しの強さで契約を獲得するスタイルも存在しました。しかし現代の営業環境では、その考え方は通用しなくなっています。なぜなら顧客は営業担当者よりも多くの情報を持てる時代になったからです。

インターネットで調べれば、

 商品情報

 価格情報

 導入事例

 競合比較

のほとんどが手に入ります。そんな時代において営業に求められる役割は、説得ではなく、顧客が正しい意思決定を行うための支援なのです。

・説得しようとするほど人は抵抗する

心理学には「心理的リアクタンス」という考え方があります。人は自由を制限されると反発したくなる性質があります。

例えば、

 絶対に買った方がいいです

 今契約しないと損です

 他社では無理です

と言われるほど、顧客は警戒心を強めます。なぜなら、「自分で判断したい」という欲求が働くからです。つまり説得は時として逆効果になるのです。

顧客が求めているのは判断材料

顧客が本当に求めているのは何でしょうか。それは、営業担当者の意見ではありません。判断材料です。

顧客は、

 導入メリット

 導入リスク

 費用対効果

 他社事例

 想定課題

を理解した上で判断したいのです。

優秀な営業は、結論を押し付けません。判断材料を整理して提供します。そして最終判断は顧客に委ねます。

・「買う理由」より「買わない理由」を理解する

多くの営業は、顧客がなぜ買うのかばかり考えます。しかしトップ営業は、顧客がなぜ買わないのかを考えます。

例えば、

 失敗したくない

 責任を負いたくない

 現状維持の方が安全

 社内説明が難しい

などです。

意思決定を妨げる要因を理解しなければ、どれだけ商品の良さを説明しても前には進みません。営業とは、購入理由を増やす仕事ではなく、意思決定の障害を取り除く仕事なのです。

・クロージングの本質

クロージングという言葉を聞くと、契約を迫るイメージを持つ人がいます。しかし本来のクロージングとは、顧客の意思決定を整理することです。

例えば、

 導入後の効果は明確ですか

 不安な点は残っていますか

 社内調整で課題はありますか

 判断に必要な情報は揃っていますか

こうした確認を通じて、顧客自身が納得して判断できる状態を作ります。これが本来のクロージングです。

・納得がなければ継続はない

仮に強引な説得で契約が取れたとします。しかし顧客に納得感がなければ、後から問題が発生します。

 クレームになる

 解約になる

 紹介が生まれない

 信頼が失われる

という結果になります。

一方で納得して契約した顧客は、多少の問題が起きても前向きに協力してくれます。なぜなら自分で選択したという意識があるからです。

・優秀な営業ほど急がない

成果を出す営業には共通点があります。それは、顧客を急かさないことです。もちろん決断を先延ばしにさせるわけではありません。しかし、無理に背中を押すこともしません。顧客が十分理解し、十分納得し、十分準備できる状態を作ります。その結果、決定後の満足度も高くなります。

・営業マネージャーが教えるべきこと

管理職が部下に教えるべきなのは、説得テクニックではありません。本当に教えるべきなのは、意思決定支援の考え方です。

例えば、

 顧客の判断基準は何か

 誰が決裁権を持っているのか

 どんなリスクを恐れているのか

 社内で何を説明しなければならないのか

を理解させることです。

これができる営業は、契約後も顧客との良好な関係を維持できます。

営業は顧客の代理人でもある

営業は自社の利益を代表する立場です。しかし同時に、顧客の利益も守らなければなりません。そのためには、売ることだけを考えてはいけません。顧客にとって本当に良い選択かどうかを考える必要があります。この姿勢が信頼を生みます。そして信頼が長期的な成果を生みます。

 ・本当に優れた営業とは

優れた営業とは、説得が上手い人ではありません。顧客が、「自分で正しい判断ができた」と思える状態を作る人です。顧客は契約したことよりも、納得して決断できたことを評価します。その支援ができる営業こそ、真に価値のある営業なのです。

 三流の営業は説得する。

 二流の営業は説明する。

 一流の営業は納得を支援する。

 顧客は説得されたいのではない。

 正しい判断をしたいのである。

 あなたは今日、顧客を説得しただろうか。

 それとも納得を支援しただろうか。

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