営業マインドセット(第7回:納得を支援)

 営業は説得する仕事ではなく、納得を支援する仕事である

営業という仕事に対して、多くの人が抱いている誤解があります。

それは、「営業とは相手を説得する仕事である」という考え方です。確かに昔の営業では、話術や押しの強さで契約を獲得するスタイルも存在しました。しかし現代の営業環境では、その考え方は通用しなくなっています。なぜなら顧客は営業担当者よりも多くの情報を持てる時代になったからです。

インターネットで調べれば、

 商品情報

 価格情報

 導入事例

 競合比較

のほとんどが手に入ります。そんな時代において営業に求められる役割は、説得ではなく、顧客が正しい意思決定を行うための支援なのです。

・説得しようとするほど人は抵抗する

心理学には「心理的リアクタンス」という考え方があります。人は自由を制限されると反発したくなる性質があります。

例えば、

 絶対に買った方がいいです

 今契約しないと損です

 他社では無理です

と言われるほど、顧客は警戒心を強めます。なぜなら、「自分で判断したい」という欲求が働くからです。つまり説得は時として逆効果になるのです。

顧客が求めているのは判断材料

顧客が本当に求めているのは何でしょうか。それは、営業担当者の意見ではありません。判断材料です。

顧客は、

 導入メリット

 導入リスク

 費用対効果

 他社事例

 想定課題

を理解した上で判断したいのです。

優秀な営業は、結論を押し付けません。判断材料を整理して提供します。そして最終判断は顧客に委ねます。

・「買う理由」より「買わない理由」を理解する

多くの営業は、顧客がなぜ買うのかばかり考えます。しかしトップ営業は、顧客がなぜ買わないのかを考えます。

例えば、

 失敗したくない

 責任を負いたくない

 現状維持の方が安全

 社内説明が難しい

などです。

意思決定を妨げる要因を理解しなければ、どれだけ商品の良さを説明しても前には進みません。営業とは、購入理由を増やす仕事ではなく、意思決定の障害を取り除く仕事なのです。

・クロージングの本質

クロージングという言葉を聞くと、契約を迫るイメージを持つ人がいます。しかし本来のクロージングとは、顧客の意思決定を整理することです。

例えば、

 導入後の効果は明確ですか

 不安な点は残っていますか

 社内調整で課題はありますか

 判断に必要な情報は揃っていますか

こうした確認を通じて、顧客自身が納得して判断できる状態を作ります。これが本来のクロージングです。

・納得がなければ継続はない

仮に強引な説得で契約が取れたとします。しかし顧客に納得感がなければ、後から問題が発生します。

 クレームになる

 解約になる

 紹介が生まれない

 信頼が失われる

という結果になります。

一方で納得して契約した顧客は、多少の問題が起きても前向きに協力してくれます。なぜなら自分で選択したという意識があるからです。

・優秀な営業ほど急がない

成果を出す営業には共通点があります。それは、顧客を急かさないことです。もちろん決断を先延ばしにさせるわけではありません。しかし、無理に背中を押すこともしません。顧客が十分理解し、十分納得し、十分準備できる状態を作ります。その結果、決定後の満足度も高くなります。

・営業マネージャーが教えるべきこと

管理職が部下に教えるべきなのは、説得テクニックではありません。本当に教えるべきなのは、意思決定支援の考え方です。

例えば、

 顧客の判断基準は何か

 誰が決裁権を持っているのか

 どんなリスクを恐れているのか

 社内で何を説明しなければならないのか

を理解させることです。

これができる営業は、契約後も顧客との良好な関係を維持できます。

営業は顧客の代理人でもある

営業は自社の利益を代表する立場です。しかし同時に、顧客の利益も守らなければなりません。そのためには、売ることだけを考えてはいけません。顧客にとって本当に良い選択かどうかを考える必要があります。この姿勢が信頼を生みます。そして信頼が長期的な成果を生みます。

 ・本当に優れた営業とは

優れた営業とは、説得が上手い人ではありません。顧客が、「自分で正しい判断ができた」と思える状態を作る人です。顧客は契約したことよりも、納得して決断できたことを評価します。その支援ができる営業こそ、真に価値のある営業なのです。

 三流の営業は説得する。

 二流の営業は説明する。

 一流の営業は納得を支援する。

 顧客は説得されたいのではない。

 正しい判断をしたいのである。

 あなたは今日、顧客を説得しただろうか。

 それとも納得を支援しただろうか。

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