組織が衰退する時には、ある共通した兆候が現れます。それは「手段が目的化する」という現象です。本来、企業活動には必ず目的があります。顧客に価値を提供するため。利益を生み出すため。市場で選ばれるため。社員が成長するため。組織のあらゆる活動は、その目的を達成するための手段に過ぎません。
ところが、組織が大きくなり、制度やルールが増え始めると、いつの間にか手段そのものが目的になってしまうことがあります。そして、この状態が続くと組織は静かに弱体化していきます。
例えば、本来、営業会議の目的は何でしょうか。
売上達成のために課題を共有し、知恵を出し合い、行動を改善することです。
しかし手段が目的化すると、「会議を開催すること」そのものが目的になります。
会議は毎週行われる。資料も作られる。報告もされる。しかし行動は変わらない。
成果も変わらない。参加者は疲弊する。それでも会議だけは続く。
なぜなら、会議を行うことが目的になっているからです。
これは非常に危険な状態です。
また、営業管理においても同じことが起こります。本来、KPIは成果を生み出すための管理指標です。ところが手段が目的化すると、「訪問件数を増やすこと」「架電件数を増やすこと」「提案件数を増やすこと」だけが目的になってしまいます。
数字は達成される。しかし受注は増えない。利益も増えない。顧客満足も向上しない。
それでも管理者は満足する。なぜならKPIを達成したからです。しかしそれは成果ではなく活動実績でしかありません。
数字を管理しているつもりで、数字に支配されている状態です。さらに恐ろしいのは、人事評価制度にも現れることです。本来、評価制度は社員の成長と組織成果を促進するために存在します。しかし評価シートの記入や面談実施が目的になってしまうことがあります。面談は行う。書類も提出する。評価も入力する。しかし部下は成長しない。モチベーションも上がらない。それでも制度は運用され続ける。なぜなら、本来の目的を忘れているからです。
このような組織には共通点があります。「なぜそれをやるのか」という問いが消えているのです。
人は目的を忘れると作業に没頭する。考えなくなる。疑問を持たなくなる。そして前例を守ることが最優先になる。
その結果、顧客より社内ルールを優先する。成果より手続きを優先する。改善より現状維持を優先する。という状態に陥いります。
こうなると環境変化への対応力は急速に失われます。市場は変化する。顧客ニーズも変化する。競争環境も変化する。しかし組織だけが変わらない。いや、正確には変われないのです。なぜなら手段を守ることが目的になっているからです。
一方で、強い組織は常に目的に立ち返ります。
営業会議をすることが目的ではない。成果を出すことが目的です。
KPIを管理することが目的ではない。顧客価値を高めることが目的です。
評価制度を運用することが目的ではない。人材を成長させることが目的です。
目的が明確であれば、手段は変えられます。不要になればやめることもできます。
より良い方法があれば置き換えることもできる。だから変化に強いのです。
ドラッカーは「成果を生まない活動は仕事ではない」と述べた。厳しい言葉だが、本質を突いています。組織に必要なのは活動量ではありません。成果につながる活動です。
手段はあくまで手段です。会議も、制度も、ルールも、KPIも、報告書も、すべては目的達成のための道具に過ぎません。
道具を磨くことに夢中になり、本来の目的を忘れた瞬間から組織の衰退は始まります。
だから管理者は定期的に問い続けなければなりません。「この活動は何のためにあるのか」「それは本当に成果につながっているのか」「今のやり方が最善なのか」
その問いを失わない組織だけが、変化の激しい時代の中でも成長し続けることができるのです。
です。


