営業の仕事は、単に商品やサービスを売ることではありません。
成果が出た理由を分析し、成果が出なかった理由を分析し、その経験を次の成果につなげていくことです。つまり営業とは、「学習する仕事」でもあります。ところが、思うような成果が上がらない営業ほど、「なぜなぜ分析」を行わない傾向があります。目の前で起きた現象だけを見て判断し、その奥にある原因を探ろうとしないのです。そして、その積み重ねがやがて大きな差となって現れます。
例えば失注した場合を考えてみましょう。
なぜ契約できなかったのか。ここで多くの営業は、「価格が高かったからです」と答えます。しかし、本当にそうでしょうか。なぜ価格が高いと感じられたのか。なぜ価値が伝わらなかったのか。なぜ競合との差別化ができなかったのか。なぜ顧客の意思決定基準を把握できなかったのか。
このように深掘りしていくと、本当の原因は価格ではなく、ヒアリング不足や提案不足ですことが少なくありません。
「価格が高かった」で思考を止めてしまう営業は改善できません。原因を間違えているからです。これは病気の原因を調べずに痛み止めだけ飲み続けるのと同じです。一時的に問題が隠れても、根本原因は解決されません。だから同じ失敗を繰り返すのです。また、なぜなぜ分析をしない営業は成功も再現できません。たまたま大型案件を受注した。偶然タイミングが良かった。顧客の予算が余っていた。紹介案件だった。こうした偶然を実力だと思い込む。すると次回以降、同じ成果を出せなくなります。なぜなら、自分が何をしたから成功したのか理解していないからです。
優秀な営業は成功した時ほど分析します。なぜ受注できたのか。なぜ競合に勝てたのか。なぜ顧客は自社を選んだのか。そこから再現可能な成功要因を抽出することをおこないます。だから成果が安定するのです。
さらに、なぜなぜ分析をしない営業は成長速度が極端に遅くなります。一年間で百件訪問したとしても、百回同じ失敗を繰り返しているだけかもしれません。
一方で分析する営業は違います。一回の失敗から学ぶ。一回の成功から学ぶ。経験を知識に変える。知識を行動に変える。だから同じ一年でも成長量に大きな差が生まれます。
経験年数が長いだけの営業と、本当に実力のある営業の違いはここにあります。また、管理職になった時にその差はさらに拡大します。原因分析ができない営業は、部下の指導も感覚的になってしまいます。「もっと頑張れ」「気合が足りない」「訪問件数を増やせ」
という精神論に頼り始めます。しかし、それでは問題は解決しません。本当に必要なのは、なぜ案件化しないのか。なぜ提案に進まないのか。なぜ失注するのか。なぜ利益率が低いのか。を構造的に分析することです。原因が分からなければ対策も間違います。対策が間違えば成果も出ません。そして組織全体が停滞に陥ります。
営業において最も危険なのは失敗そのものではありません。失敗から学ばないことです。
失敗は財産になる。しかし分析されなかった失敗は単なる損失で終わる。だから優秀な営業は常に問い続けるのです。「なぜ受注できたのか」「なぜ失注したのか」「なぜ顧客はそう考えたのか」「なぜ自分はその行動を取ったのか」その問いを繰り返すことで、本質に近づいていきます。営業力とは、商品知識や話術だけではありません。原因を追究する力です。
なぜなぜ分析をしない営業は、同じ場所を何年も回り続けることになります。
なぜなぜ分析を続ける営業は、経験を知恵に変えながら成長し続けます。
その差は最初は小さい。しかし五年後、十年後には決定的な差となって現れるのです。


