営業マインドセット(第6回:人間的信用)

 営業は商品を売る仕事ではなく、自分自身を信頼してもらう仕事である

営業という仕事を長く続けていると、ある事実に気づきます。それは、同じ商品を扱っていても売れる人と売れない人がいるということです。

価格も同じ。

品質も同じ。

納期も同じ。

提案資料も同じ。

それにもかかわらず成果に大きな差が生まれます。なぜでしょうか。その答えは、顧客が商品だけを見ているのではなく、「誰から買うのか」を見ているからです。

 ・顧客は商品を買う前に営業を見ている

顧客は契約書にサインする前に、無意識のうちに次のことを判断しています。

 この人は信用できるか

 約束を守る人か

 困った時に助けてくれるか

 本音を話してくれるか

 長く付き合える相手か

つまり顧客は、商品を評価する前に営業担当者を評価しているのです。実際、多くの商談では商品差よりも担当者差の方が大きな影響を与えています。

・なぜ同じ商品で差が生まれるのか

営業の世界には昔からこう言われています。

 人は商品を買うのではない。

 人から買うのである。

これは決して精神論ではありません。

例えば顧客が二つの提案で迷っているとします。性能差はほとんどありません。価格差も小さい。その時に最後の決め手になるのは何でしょうか。多くの場合、「この人なら安心できる」という感覚です。つまり信頼です。

・信頼は小さな行動から生まれる

営業の信頼は特別な能力から生まれるわけではありません。

むしろ日常の小さな行動の積み重ねです。

例えば、

 約束した時間を守る

 連絡を放置しない

 調べると言ったことを忘れない

 分からないことを誤魔化さない

 ミスを素直に認める

こうした行動が信頼を形成します。

逆にどれほど話が上手くても、

 約束を守らない

 嘘をつく

 責任転嫁する

人は信用されません。

・売り込む人より相談される人になる

売れない営業ほど、顧客に売ろうとします。

売れる営業ほど、顧客から相談されます。この差は非常に大きいものです。売り込まれる相手には警戒心を持ちます。しかし相談相手には本音を話します。

トップ営業は顧客から、

どう思いますか

 他社ならどうしていますか

 この判断で大丈夫でしょうかと意見を求められます。

ここまで来ると営業は単なる販売担当ではありません。顧客のパートナーになっています。

・誠実さは短期的に損をし、長期的に勝つ

営業人生では、誠実でいることが不利に見える場面があります。

例えば、

 商品の弱点を伝える

 導入リスクを説明する

 無理な契約を断るなどです。

短期的には受注を逃すかもしれません。しかし長期的には大きな信頼を獲得します。顧客は思っている以上に営業を見ています。誠実な営業は忘れられません。そして信頼された営業には再び相談が来ます。

 ・人間力の差が成果の差になる

営業力というと、

ヒアリング力

提案力

プレゼン力

クロージング力

が注目されます。

しかし一定レベルを超えると、差を生むのは人間力です。

例えば、

 謙虚さ

 誠実さ

 責任感

 学習意欲

 感謝の気持ちです。

顧客は最終的に、この人と長く付き合いたいかを判断しています。

 ・信頼は借りることはできない

営業成績は一時的に作ることができます。キャンペーンもあります。値引きもあります。偶然もあります。しかし信頼だけは違います。信頼は積み上げることしかできません。近道も裏技もありません。だからこそ強いのです。

そして一度築いた信頼は、

 リピート

 紹介

 継続取引

という形で営業人生を支えてくれます。

・営業マネージャーが育てるべきもの

管理職が部下に教えるべきなのは、営業テクニックだけではありません。本当に育てるべきなのは、信頼される人間性です。なぜなら、スキルは真似できます。商品知識も学べます。しかし人格は日々の習慣からしか形成されません。強い営業組織は、数字だけでなく信頼される行動を評価しています。

・本当に売っているもの

営業担当者は商品を売っていると思いがちです。しかし実際には違います。顧客が購入しているのは、安心感であり、期待であり、信頼です。商品はその手段に過ぎません。だからこそ営業は、商品知識を磨くだけでなく、自分自身を磨かなければなりません。

 三流の営業は商品を売る。

 二流の営業は提案を売る。

 一流の営業は信頼を売る。

 顧客は何を買うかで悩む。

 しかし最後は誰から買うかで決める。

 あなたの商品が選ばれたのか。

 それとも、あなた自身が選ばれたのか。

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