営業評価は「結果」から「成果を生み出すプロセス」

営業の評価というと、これまでは「売上目標を達成したか」「予算比何%だったか」といった結果を中心に考えることが一般的でした。もちろん、営業である以上、結果は重要です。どれだけ努力しても、会社として必要な売上や利益を生み出せなければ、営業活動として十分とはいえません。しかし、これからの営業評価を考えるうえでは、結果だけを見る評価には限界があることも理解しておく必要があります。

 同じ「売上110%」でも中身は違う

例えば、二人の営業担当者がともに売上目標110%を達成したとします。Aさんは、既存の大口顧客から偶然大型案件が入りました。しかし、新規開拓はほとんど行わず、値引きも多く、翌年度につながる案件も十分に作れていません。一方、Bさんは新規顧客を開拓し、顧客の課題を丁寧にヒアリングし、値引きを抑えながら利益を確保しました。さらに、翌年度につながる案件も複数形成しています。結果だけを見れば、二人とも「110%達成」です。しかし、「来年も成果を出せる可能性を高める行動をしているのはどちらか」という視点で見ると、評価すべき内容は大きく違ってきます。

ここに、結果評価だけでは捉えきれない営業評価の難しさがあります。

 結果は「過去」、プロセスは「未来」を映す

売上、粗利益、受注件数などは、営業にとって極めて重要な指標です。しかし、これらは基本的に営業活動を行った結果として現れる「遅行指標」です。売上が落ちてから「もっと頑張ろう」と言っても、手を打つのが遅い場合があります。営業活動を分解すると、顧客へのアプローチ→商談→課題発見→案件化→提案→見積→受注→売上・利益という流れがあります。もし売上がまだ落ちていなくても、商談数が減り、案件化数が減り、提案件数が減っているのであれば、その先にある売上が落ちる可能性は高まっています。逆に、現在の売上は低くても、新規商談が増え、案件化率が上昇し、有望案件が積み上がっている営業担当者であれば、将来の成果につながる可能性があります。つまり、結果評価が「これまで何を達成したのか」を見るものだとすれば、プロセス評価は「これから成果を生み出せる状態を作っているか」を見るものなのです。

 プロセス評価は「訪問件数評価」ではない

ただし、ここで注意しなければならないことがあります。プロセスを評価すると聞くと、「訪問件数」「電話件数」「メール件数」などを評価すればよいと考えてしまうことです。

例えば、訪問件数を評価対象にすれば、営業担当者は訪問件数を増やそうとするでしょう。10件だった訪問が20件になれば、一見すると営業活動が活発になったように見えます。しかし、成果につながらない訪問を20件行っても意味はありません。重要なのは、「どれだけ動いたか」ではなく、「成果につながる行動をどれだけ実行したか」です。そのため、これからの営業評価では「量」だけでなく「質」と「転換率」を見る必要があります。例えば、100社へアプローチし、40社と商談し、20社を案件化し、10社へ提案し、5社から受注した、という営業活動であれば、単なる活動件数だけでなく、「アプローチ→商談」「商談→案件化」「案件化→提案」「提案→受注」という各段階の転換率を見ることができます。

こうなるとマネージャーの指導も変わります。「もっと訪問しろ」ではなく、「商談数は十分なのに案件化率が低い。顧客課題を引き出すヒアリングに問題があるのではないか」と、具体的な改善指導ができるようになります。

営業マネジメントが「精神論」から「因果分析」へ変わるのです。

 「KGI→KPI→KAI」で営業評価を考える

これからの営業評価では、KGI・KPI・KAIを階層的に考えることが有効です。例えば最終目標であるKGIを「粗利益1億円」とします。そのためのKPIとして、新規受注20社、受注率30%、平均粗利益率25%、などを設定します。さらに、そのKPIを実現するためのKAI、つまり重要行動指標として、重点顧客への接触、顧客課題のヒアリング、決裁者との面談、提案活動、案件レビュー、などを設定します。

すると営業評価は、「最終的にどのような成果を出したのか」だけでなく、「成果につながる中間指標をどこまで作ったのか」「成果を生み出す重要行動を実行したのか」まで見ることができます。つまり、KGI=結果  KPI=中間成果  KAI=成果を生み出す行動 

という三層構造で営業を捉えることができるのです。

 結果だけでは「なぜ売れたのか」が分からない

結果評価だけの最大の問題は、成功した理由が分からないことです。

Aさん120%、Bさん105%、Cさん85%。ここまでは数字を見れば分かります。

しかし、「なぜAさんは120%を達成できたのか」は売上数字だけでは分かりません。

Aさんの営業活動を詳しく分析すると、初回面談で顧客の意思決定構造を確認している、訪問前に顧客課題の仮説を立てている、案件化後すぐに提案している、値引き交渉の前に顧客価値を定量化している、といった特徴が見つかるかもしれません。

ここまで分かれば、Aさん個人の営業ノウハウを組織の営業ノウハウへ変えることができます。これこそプロセスを見る大きな意味です。

 営業評価の目的そのものを変える

これからの営業評価で重要なのは、「結果評価か、プロセス評価か」という二者択一ではありません。結果を軽視してはいけませんし、プロセスだけを評価して「頑張ったから高評価」という制度にしてもいけません。必要なのは、「結果 × プロセス × 再現性」という考え方です。何を達成したのか。その成果を、どのような行動によって生み出したのか。

そして、その成功方法をもう一度再現できるのか。さらに、それを他の営業担当者にも展開できるのか。ここまで見ることが、これからの営業評価には求められます。

営業評価とは、単に過去の成績に点数をつけ、賞与や昇進を決めるためだけの制度ではありません。本来は、営業担当者に対して、「会社はどのような成果を求めているのか」「その成果を生み出すために、どのような行動をしてほしいのか」を伝える重要なメッセージでもあります。だからこそ、評価制度を変えると営業員の行動が変わります。営業員の行動が変われば、マネージャーの指導も変わります。マネージャーの指導が変われば、やがて営業組織そのものが変わっていきます。

これから求められる営業評価とは、単なる「過去の結果を査定する仕組み」ではなく、「次の成果を生み出す仕組み」なのです。

Evoto

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