営業の現場では、予定通りに一日が進むことはほとんどありません。顧客から突然電話が入る、上司から資料作成を頼まれる、社内から問い合わせが来る、トラブルが発生する、急な会議が設定される。このような出来事が次々と起こります。その結果、朝に立てた予定がほとんど進まず、一日の終わりに「今日も自分の仕事ができなかった」と感じる営業担当者は少なくありません。
ここで注意しなければならないのは、「緊急度」と「重要度」を混同しないことです。
緊急な仕事には、人を動かす強い力があります。電話が鳴れば出たくなります。メールが届けばすぐ返信したくなります。「至急」と書かれた依頼を見ると、最優先で処理しなければならないように感じます。しかし、緊急だからといって、必ずしも営業成果への重要度が高いとは限りません。逆に、重要でありながら緊急ではない仕事があります。
重要顧客の攻略方法を考えること、新規顧客候補をリストアップすること、商談の仮説を立てること、顧客企業の業界を研究すること、過去の失注案件を分析すること、提案力を高めるために学習することなどです。
これらは今日やらなくても、すぐには困りません。だからこそ後回しになりやすいのです。ところが、長期的な営業成果を左右するのは、この「重要だが緊急ではない仕事」です。
たとえば、大型案件の商談が来週あるとします。前日に慌てて提案資料を作れば、それは「緊急かつ重要な仕事」になります。しかし、一週間前から顧客情報を整理し、仮説を立て、想定質問を考え、提案内容を磨いておけば、「重要だが緊急ではない段階」で仕事を進めることができます。つまり、優れた時間管理とは、仕事を速く処理することだけではありません。「重要な仕事が緊急事態になる前に手を打つこと」なのです。そのためには、スケジュールの空いたところに重要な仕事を入れるのではなく、重要な仕事の時間を先に確保する必要があります。
たとえば、「9時から10時は重点顧客への提案準備」「16時から16時30分は新規顧客へのアプローチ」「金曜日の午後は翌週の商談準備」というように、成果につながる活動を先に予定として押さえてしまいます。これを「タイムブロッキング」と考えることができます。予定表を単なるアポイント管理表ではなく、自分の営業戦略を時間に落とし込んだ行動計画表に変えるのです。時間管理が苦手な営業担当者ほど、「空いた時間にやろう」と考えます。しかし営業の仕事では、空いた時間はなかなか生まれません。 だからこそ、「時間ができたらやる」のではなく、「重要だから時間を確保する」という発想が必要なのです。営業成果を高める第一歩は、予定を詰め込むことではありません。「何をやらないか」「何を後回しにするか」「何に時間を優先配分するか」を決めることです。時間管理とは、スケジュール管理以上に、優先順位を決める意思決定能力なのです。


