サイバーセキュリティ

「サイバーセキュリティは情報システム部門の仕事だ」

もし営業部門が今でもそう考えているとしたら、その認識は変える必要があります。

近年のサイバー攻撃は、単にパソコンが使えなくなるという問題ではありません。受注、物流、生産、請求、顧客対応など、企業活動そのものを止めてしまう経営リスクになっています。日本企業のサイバー攻撃による業績や事業への影響が相次いで報じられました。。AIの普及が進む一方で、それを安全に利用するための「守り」への投資も重要になっているのです。

では、なぜこれが営業の問題なのでしょうか。理由は単純です。営業は、企業の中でも特に多くの社外情報と接触する部門だからです。メール、添付ファイル、オンライン商談、顧客データ、見積書、提案書、名刺情報、クラウドサービスなど、営業担当者は日々大量の情報を社外とやり取りしています。つまり営業担当者一人ひとりが、企業と外部をつなぐ「入口」でもあるのです。

たとえば、取引先を装ったメールが届いたとします。

「先ほどお送りした見積書に誤りがありました。最新版はこちらです」普段からやり取りしている会社名や担当者名が書かれていれば、忙しい営業担当者ほど反射的に添付ファイルを開いてしまう可能性があります。AIの進歩によって、こうしたメールもますます自然で精巧になると考える必要があります。

これから必要なのは、「怪しいメールは文章がおかしいから分かる」という前提を捨てることです。文章が自然で、会社名も担当者名も正しく、過去の商談内容まで踏まえている。それでも偽物かもしれない。営業担当者には、これまで以上に「確認する習慣」が求められます。

しかし、サイバーセキュリティの本当の怖さは、システム被害だけではありません。営業という観点から考えると、最大の損失は顧客からの信頼を失うことです。営業担当者が何年もかけて築いた信頼関係でも、「御社に預けた情報が漏えいした」となれば、一瞬で揺らぐ可能性があります。

売上は取り戻せても、信頼を取り戻すには長い時間がかかります。だからこそ、これからの営業教育では、「売る力」「提案する力」「交渉する力」だけでは不十分です。「顧客の情報を守る力」も営業力の一部であると考える必要があります。

さらに重要なのは、セキュリティを「守り」だけで考えないことです。顧客企業がAIやDXを進めれば進めるほど、「安全に運用できるのか」「情報管理は大丈夫なのか」「取引先まで含めてリスク管理できているのか」という問題が経営課題になります。

顧客の課題を「売上」「コスト」「商品」だけで見るのではなく、事業継続・情報管理・サプライチェーンまで見る営業には、新たな提案機会が生まれるからです。これから優秀な営業担当者に求められるビジネス知識は、ますます広がります。AI、財務、マーケティング、物流、法律、そしてサイバーセキュリティ。すべての専門家になる必要はありません。しかし、「顧客の経営に何が影響を与えているのか」を理解できなければ、経営者との会話は深まりません。サイバーセキュリティを「自分には関係ないITの話」と考える営業と、「顧客の経営リスク」と考える営業。この小さな認識の違いが、これからの提案力の大きな差になっていくのではないでしょうか。

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