「自分は悪くない」が営業の成長を止める

~自己責任を負わない営業の行く末~

営業の仕事をしていれば、思い通りにならないことは必ずあります。

競合に負けることもあります。価格が高いと言われることもあります。期待していた案件が突然延期されることもあれば、顧客の予算が削減されることもあります。会社の商品力や納期、社内体制が原因となって、営業担当者だけではどうにもできないケースもあるでしょう。問題は、失敗そのものではありません。その結果を「自分は悪くない」で終わらせてしまうことです。

「仕方がなかった」で終わった瞬間、改善も終わる

たとえば、競合企業に商談で負けたとします。その営業担当者が、「競合の方が安かったから仕方ありません」と言ったとしましょう。確かに、それは事実かもしれません。しかし、ここで思考を止めてしまうと営業としての成長も止まります。

本来なら、「価格以外の価値を十分に伝えられていたか」「顧客が価格を重視する理由を確認したか」「競合との違いを明確にできていたか」「決裁者が重視する判断基準を把握していたか」「費用対効果を数字で説明できていたか」と、自分の営業プロセスを振り返る必要があります。

つまり、重要なのは、「誰が悪かったのか」ではなく、「自分には何ができたのか」という問いなのです。

 自己責任とは「自分を責めること」ではない

ここで注意したいのは、自己責任という言葉の意味です。自己責任というと、「失敗はすべて自分が悪い」「言い訳をするな」「結果が出ないのは努力不足だ」といった精神論に聞こえるかもしれません。しかし、本来の意味は違います。営業における自己責任とは、結果を客観的に分析し、その中から自分が変えられるものを見つけ、次の行動を変えること

だと考えるべきです。景気を変えることはできません。競合企業の価格も変えられません。顧客の予算を自由に増やすこともできません。しかし、訪問件数、事前準備、質問内容、提案方法、決裁者へのアプローチ、フォロー頻度、案件管理、商談後の振り返りなど、自分で変えられるものは数多くあります。成長する営業は、「変えられないもの」ではなく「変えられるもの」に目を向けます。

 自己責任を負わない営業は、同じ失敗を繰り返す

自己責任を負わない営業の大きな問題は、失敗から学習できないことです。

たとえば、「競合が安かったから負けた」という結論だけで失注分析を終了すれば、次の商談でも営業方法は変わりません。しかし、

事前仮説が甘かった→ヒアリングが浅かった→顧客の潜在課題を把握できなかった→

商品説明中心の提案になった→価格以外の価値を十分伝えられなかった→価格比較になった→競合に負けたと分析すれば、改善ポイントが見えてきます。次の商談ではヒアリングを変えることができます。提案書も変えられます。質問も変えられます。つまり、失敗が次の成功の材料になるのです。営業にとって本当に怖いのは、失敗することではありません。失敗したにもかかわらず、行動が何も変わらないことです。

 「未達の理由」を説明する営業になってはいけない

自己責任を負わない姿勢は、数字にも表れます。目標未達になったとき、「市場が悪かった」「大型案件が延期になった」「競合が値下げした」「顧客の予算が削減された」と説明する営業担当者がいます。もちろん、原因分析として必要な情報です。

しかし、営業マネージャーが本当に聞きたいのは、その先です。「では、どうするのか」

ということです。たとえば、

「大型案件500万円が翌月に延期されました。そのため、A社200万円、B社150万円、C社200万円の案件を前倒しし、550万円の代替パイプラインを作ります」と言える営業なら、話は大きく変わります。前者は「できなかった理由」を説明しています。

後者は「どうすればできるか」を考えています。営業として大きな差が生まれるのは、この部分です。

 他責思考はPDCAを止める

営業活動におけるPDCAでも同じことが言えます。本来なら、計画 → 行動 → 結果 → 原因分析 → 改善 → 次の行動という循環を回す必要があります。

ところが、自己責任を負わない営業の場合、計画 → 行動 → 未達 → 他責 → 終了

となってしまいます。これでは改善が起こりません。

結果として、毎月同じような反省を繰り返すことになります。

「新規開拓ができませんでした」「既存顧客対応が忙しかったからです」「来月は頑張ります」これではPDCAとは言えません。

必要なのは、「なぜ既存顧客対応に時間を取られたのか」「時間配分に問題はなかったか」

「新規開拓時間を先に確保できなかったか」「訪問以外の手段を使えなかったか」「優先順位を間違えていなかったか」と掘り下げることです。ここまで考えて初めて、改善につながります。

 「でも」「だって」「今回は特殊だった」が増えたら要注意

自己責任を負わない営業には、もう一つ特徴があります。上司からフィードバックされたときに、「でも……」「それは違います」「今回は特殊だったんです」「先方の担当者が……」「競合が……」と、自分の行動より先に事情を説明するようになります。もちろん、事実関係を説明すること自体が悪いわけではありません。問題なのは、事情説明によって自分の改善点まで消してしまうことです。成長する営業は、指摘されたときに、「確かにそういう部分もあったかもしれない」「次回はどう変えればよいだろう」と考えます。

フィードバックを「自分を否定するもの」ではなく、営業力を高めるための情報として扱うのです。

 他責は、最後には周囲からの信頼まで失わせる

さらに怖いのは、他責思考が個人の成長だけでは済まなくなることです。失敗するたびに、「商品開発が悪い」「営業企画が悪い」「物流が悪い」「上司が悪い」「顧客が悪い」「会社が悪い」と言っていたら、周囲はどう感じるでしょうか。最初は事情を理解してくれるかもしれません。しかし、それが繰り返されると、「この人は何か問題が起こると必ず誰かのせいにする」と思われるようになります。すると、少しずつ協力者が減っていきます。重要な情報が集まらなくなり、難しい案件を任せてもらえなくなり、上司から権限を与えてもらえなくなる可能性もあります。営業は一人で完結する仕事ではありません。

開発、生産、物流、管理、上司、同僚など、多くの人の協力によって顧客価値を生み出します。だからこそ、他責思考は組織営業においても大きなマイナスになるのです。

 「誰の責任か」より「次に何を変えるか」

営業には、自分ではどうにもできないことがあります。だから、すべてを自分の責任にする必要はありません。しかし、どのような結果になったとしても、「この結果から、自分が次に変えられることは何だろう」と考えることはできます。失敗したとき、「誰が悪かったのか」を探す営業と、「次に何を変えるのか」を探す営業。一年程度では、それほど大きな違いには見えないかもしれません。しかし、これを5年、10年と続ければ、営業力には大きな差が生まれます。一方は、経験を「年数」として積み重ねます。もう一方は、経験を「知恵」として積み重ねます。ここに大きな違いがあります。

「10年営業を経験した人」と「同じ営業を10年間繰り返した人」は、同じではありません。営業における自己責任とは、自分を責めることではありません。失敗を自分の成長材料として引き受けることです。

そして、「自分には何ができたのか」「次は何を変えるのか」と問い続けることです。

この二つの問いを持ち続けられる営業こそ、失敗するたびに強くなり、環境が変化しても成長を続けられる営業なのです。

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