顧客から「売上が伸びない」という相談を受けたとします。そこで営業担当者が、すぐに販売促進策や新商品を提案したとしたら、それは本当に正しい提案でしょうか。売上が伸びない原因には、さまざまな可能性があります。新規顧客が減っているのかもしれません。既存顧客の購入頻度が下がっているのかもしれません。競合企業へ顧客が流れているのかもしれません。商品の魅力が低下しているのかもしれません。営業担当者の商談件数そのものが不足している可能性もあります。
つまり、「売上が伸びない」という現象だけを見ても、何を改善すればよいのかは分からないのです。ここで重要になるのが、「現象」と「原因」を分けて考える力です。
顧客が話す問題の多くは、最初の段階では「現象」です。「売上が下がった」「在庫が増えた」「顧客が減った」「残業が多い」「利益が出ない」これらに対して「なぜでしょうか」と問いを重ねていくことで、原因が見えてきます。
さらに重要なのは、一つの原因を見つけただけで安心しないことです。たとえば「売上が下がった原因は商談件数の減少です」と分かったとします。そこでさらに、「なぜ商談件数が減ったのでしょうか」と考えます。
新規アポイントが減っているからかもしれません。では、「なぜ新規アポイントが減ったのでしょうか」と、さらに掘り下げます。新規顧客候補のリストが更新されていない、既存顧客対応に時間を取られている、営業担当者が新規開拓を避けているなど、より具体的な原因が見えてきます。こうした考え方は「5Whys」などにも通じます。重要なのは、機械的に5回「なぜ」と聞くことではありません。問題の因果関係をたどり、どこを変えれば結果が変わるのかを見つけることです。
営業担当者が真因を発見できれば、提案の質は大きく変わります。逆に、原因を間違えれば、どれほど優れた商品を提案しても成果にはつながりません。医師が診断をせずに薬を処方しないのと同じように、営業も課題を十分に理解せずに商品を提案すべきではありません。
優れた営業担当者は、商品説明を急ぎません。顧客の話を聞き、事実を確認し、原因を掘り下げ、仮説を立てます。そして、「この問題の本当の原因は何だろう」と考え続けます。
営業の提案力は、話す力だけで決まるものではありません。
その前段階にある「正しく課題を捉える力」こそが、提案の質を決めるのです。


