繁忙期は売上を伸ばす大きなチャンスですが、準備不足だと機会損失やクレーム、社員燃え尽き、品質低下につながります。
1. 戦略・計画面(事前準備)
1.1 需要予測と目標の再確認
過去データ(直近3〜5年の同時期)と販促計画、マーケティング施策を突合して需要を推定する。
月次/週次で見直す「ローリングフォーキャスト」を導入。
1.2 必要パイプラインの算出
必要パイプライン(必要な商談総額) = 目標売上 ÷ 平均受注率(win rate)
例:目標売上 10,000,000 円、受注率 25%(0.25)
10,000,000 ÷ 0.25 = 40,000,000 円(必要パイプライン)
1.3 リソース配分計画
営業人数、CS(カスタマーサクセス)・物流・在庫・技術サポートの必要人数を事前に算出。
「ピーク時の臨時体制(シフト表)」を作る(人員、担当、連絡フロー)。
2. オペレーション(実行と運用)
2.1 顧客対応の優先順位付け
優先度マトリクス:(緊急度 × 重要度)で「即対応」「24h以内」「3営業日以内」等に分ける。
VIP顧客(売上上位20%等)は専任をつける。
2.2 リード/案件管理の徹底(CRM運用)
CRMの必須項目を最小限に統一(例:次アクション/予定日/見込み度%)。
CRMのデータ遅延や重複を防ぐため、日次でデータクレンジングルールを明確化。
2.3 在庫・納期管理(営業が見るべき指標)
(Reorder Point, ROP) = リードタイム中の需要 + 安全在庫
例:日次需要 100個、リードタイム 7日、想定安全在庫 200個
リードタイム需要 = 100 × 7 = 700
ROP = 700 + 200 = 900個
欠品が商談へ直結する商品は優先的に確保。
2.4 価格・プロモーション管理
短期ディスカウントは粗利への影響を必ず計算(マージン下限を設定)。
プロモーションは供給と連動(過剰注文→欠品の悪循環を避ける)。
3. コミュニケーション(顧客・社内)
3.1 顧客向け
事前案内テンプレ(出荷遅延・在庫状況・問い合わせ窓口)を用意。
返信テンプレ(迅速さ重視)例:
「ご連絡ありがとうございます。現在の在庫は〇〇で、最短出荷日は△月△日です。詳細は担当××(携帯)までご連絡ください。」
3.2 社内連携
デイリー朝会:短い(10〜15分)で「障害」「遅延見込み」「優先顧客」を報告。
エスカレーション経路を1ページで可視化(誰に何分で連絡か)。
4. KPI と監視指標(数字で追う)
主要指標(例):
(1) パイプライン・カバレッジ = パイプライン総額 ÷ 目標売上
目標達成に十分か評価(理想は業界・受注率で逆算)
(2) 必要パイプライン = 目標 ÷ 受注率
(3) 受注率(Win Rate) = 受注数 ÷ 商談数
例:商談 200 件、受注 30 件 → 30 ÷ 200 = 0.15 = 15%
計算(桁ごと): 30 ÷ 200 = 0.15 → 15%
(4) 売上予測精度(Forecast Accuracy) = 1 − ((実績 − 予測) ÷ 実績)
例:予測 9,500,000、実績 10,000,000
差 = 10,000,000 − 9,500,000 = 500,000
500,000 ÷ 10,000,000 = 0.05 → 1 − 0.05 = 0.95 → 95%
(5) 営業稼働率(Utilization) = 実活動時間 ÷ 可用時間
例:1週間の勤務時間 40h、商談/外勤での実働 28h → 28 ÷ 40 = 0.7 → 70%
(6) 顧客応答速度(平均初動時間):問い合わせから初回応答までの平均分数
繁忙期は「短期的にKPIの基準値を変える」必要がある場合がある(例:対応時間のSLA(サービスレベルアグリーメント・サービスレベル合意書/サービス品質保証)を調整)。
5. リスク管理・コンティンジェンシー
5.1 主要リスクと対応例
欠品リスク:安全在庫の再設定、代替品提案テンプレ用意。
配送遅延:複数配送業者の契約、緊急配送ルール(誰が承認するか)。
品質問題:出荷前検品の強化、返品対応フローを短縮化。
5.2 エスカレーションと報告フォーマット
重大インシデントは「24時間以内に」「原因・影響範囲・暫定対応・恒久対策」を文書で報告。
6. 人材管理(長時間労働対策・モチベーション維持)
シフト制で連続稼働を避ける。週次で必ず1日はフル休養日を確保。
短時間の「リフレッシュ休憩(15分)」を業務内で義務化。
成果に対する短期インセンティブ(ボーナスや表彰)を明確化。ただし長時間労働を促す制度にしない。
7. 顧客満足(CS)の維持
繁忙期専用 FAQ をウェブ上で作成して問い合わせを削減。
返金/返品ポリシーを見直し、繁忙期対応ルールを簡潔化。
クレームは必ず「24時間以内に初回連絡」するプロセスを設定。
8. テクノロジーとツール活用
CRMのダッシュボードを「繁忙期専用ビュー(優先顧客・緊急案件)」にカスタマイズ。
自動返信・チケット化で一次対応を自動化(テンプレ文とFAQリンクを必ず含める)。
在庫や物流はE2Eで見える化(納期遅延を営業が即確認可能に)。
まとめ
1. 需要とパイプラインを数値で固める(目標→受注率で必要パイプラインを算出)
2. 顧客対応の優先順位付けと明確なコミュニケーションテンプレを用意する(遅延・欠品での信頼低下を防ぐ)
3. 社内オペレーション(在庫・物流・CS)とシフトを事前に連携し、エスカレーション経路を一本化する。


