特定商取引法(特商法)は、消費者保護を目的とした法律で、不適切な取引や詐欺的な販売手法から消費者を守るために制定されています。この法律に基づき、事業者が守るべき義務や禁止事項が規定されています。
1. 対象となる取引形態
特商法が適用される取引形態は以下の通りです。
訪問販売(キャッチセールス、アポイントメントセールス含む)
通信販売(インターネットショッピングやカタログ販売など)
電話勧誘販売
連鎖販売取引(マルチ商法)
特定継続的役務提供(エステ、英会話教室、家庭教師サービスなど)
業務提供誘引販売取引(内職商法など)
訪問購入(自宅での買取りサービス)
取引形態によって、それぞれ特有の規制や義務が課されています。
2. 主な規制内容と注意点
(1)勧誘行為の規制
消費者が取引を断る意思を示した場合、勧誘を続けてはいけません。
不安や恐怖を与える行為、虚偽の説明、重要な事実の不告知は禁止されています。
(2)契約時の義務
事業者は、契約前に消費者に対して重要事項を正確かつ分かりやすく説明する義務があります。
書面交付の義務
契約を締結した際、契約内容が記載された書面(契約書面や概要書面)を消費者に渡す必要があります。
(3)クーリングオフ制度
消費者が一定期間内であれば理由を問わず契約を解除できる制度です。
訪問販売や電話勧誘販売:契約書面を受け取ってから8日間
連鎖販売取引(マルチ商法):20日間
クーリングオフの対象外となるケース(例:消耗品を使用した場合など)にも注意が必要です。
(4)広告規制
通信販売では、消費者に誤解を与えるような広告(優良誤認、価格誤認)は禁止されています。
返品特約について明記がない場合は、消費者が商品を返品する権利が保護されます。
(5)前払金の保全
事業者が消費者から前払いで料金を受け取る場合、倒産などでサービスが提供されないリスクを減らすため、一定の保全措置を講じる必要があります。
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3. 事業者が注意すべき禁止事項
不実告知:重要事項について事実と異なる説明をすること。
断定的判断の提供:将来の利益や価値について、確実だと断定する発言。
威迫行為:高圧的な態度で契約を強要すること。
不当な契約解除妨害:消費者がクーリングオフを行おうとした際、それを妨害する行為。
4. 違反した場合の罰則
行政指導や業務停止命令を受ける場合があります。
悪質な場合、刑事罰(懲役や罰金)が科されることもあります。
消費者に損害を与えた場合は、損害賠償責任を負う可能性があります。
5. 消費者が注意すべきポイント
消費者側としても以下の点に注意が必要です。
安易に契約を結ばない。
勧誘がしつこい場合は「断固断る」意思を示す。
クーリングオフの期間や手続き方法を把握しておく。
不審な取引や契約については消費生活センターに相談する。
特商法は事業者と消費者双方の権利を守るための法律です。事業者としては法を遵守し、適切な取引を行うことが信頼構築の基盤となります。一方で、消費者は冷静な判断と十分な情報収集が重要です。