正しいグラフ

詐欺的なグラフの使用は、情報を一見わかりやすく提示するように見せかけながら、意図的に誤解を生じさせるものです。具体的にどのような手法で認識を誤らせるのか、そしてその使用がいかに問題であるかを見ていきましょう。

 1. 不適切なスケールの使用

   手法:縦軸や横軸のスケールを変更し、数値の差が大きいように見せる、もしくは小さく見せることで誤解を誘います。たとえば、縦軸の最小値を0以外に設定して小さな変化を大きく見せるといったものです。

   影響:この手法により、視覚的にデータの変化が大きく見えたり、逆に差が目立たなく見えるため、見た人はグラフ上の数字の正確な意味を見誤ります。実際の数値や事実がわかりにくくなるため、正しい意思決定が妨げられます。

 2. データの省略や切り取り

   手法:都合の良いデータのみを表示し、他の重要なデータを省略します。例えば、増減の中間データを省いて極端な変化がある部分だけを強調する、あるいは特定の期間のみを切り取って表示するなどです。

   影響:データの一部を故意に隠すことで、全体像が把握できずに偏った見解を持ってしまいます。このようなグラフでは、見た人は事実全体を理解できず、不正確な情報を元に判断することとなります。

 3. 視覚的な錯覚を用いたデザイン

   手法:異なるサイズの円や立体図を使って実際の数値よりも大きく、あるいは小さく見せるなど、視覚的な錯覚を利用する方法です。例えば、売上の比較で円グラフを使い、円の直径で表現するべきところを面積で表示し、差異を大きく見せるといったものです。

   影響:こうした視覚的な錯覚によって、直感的にデータを誤解することになりやすいです。直感的に捉えやすいグラフがかえって誤った印象を強化し、正しいデータの理解や比較が困難になります。

 4. 割合の誤表示(累積や絶対値の混同)

   手法:累積データと一時点データを混ぜたり、絶対値と相対値を意図的に混同させたりします。たとえば、年々の累積データを表示して「成長している」と見せかけたり、絶対数の少ないデータを割合で表示して大きく見せる方法です。

   影響:データの性質が異なるにもかかわらず、同一基準で比較しているように見せかけると、視聴者は誤った解釈をしてしまいます。このようなグラフにより、実際の増減状況や基準が理解しにくくなり、判断ミスが生じます。

 5. 色や形状の使い方による印象操作

   手法:同じデータを異なる色や形状で表し、特定の数値や項目を強調して見せる方法です。たとえば、好ましくないデータを灰色など目立たない色で表示し、良いデータを鮮やかな色で強調することで、無意識的に特定の印象を与えるようにします。

   影響:色や形状が視覚的印象を大きく左右するため、視聴者は無意識に特定の解釈をしがちです。結果として、データそのものではなく、デザインがもたらす印象に基づいて認識を誤る可能性が高まります。

 なぜ詐欺的グラフの使用がダメなのか

1. 意思決定を誤らせるリスク 

   ビジネスや政策の意思決定は、正確な情報に基づいて行う必要があります。しかし、詐欺的グラフはこの意思決定を大きく誤らせ、時に経済的・社会的損失を引き起こします。

2. 信頼性の損失 

   誤解を招くグラフを頻繁に使用すると、情報の提供者としての信頼性が低下します。信頼を失うと、その後の正しい情報提供や提案が無視される可能性が高く、組織全体の評判に悪影響を及ぼします。

3. 法的・倫理的な問題 

   特に株式や商品の販売促進など、誤解を与える意図が法的に問題視される場合があります。詐欺的なグラフが悪質な意図で使われた場合、消費者保護法などによって罰せられる可能性があり、コンプライアンスに反する行為とみなされます。

詐欺的グラフは、長期的には組織の評判や信頼性に大きなダメージを与えかねないため、適切なデータの可視化を行い、正しい情報を伝えることが重要です。

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