目標金額を「予算(必要な支出や計画に基づいた適切な金額)」ではなく「前年金額(前年の実績)」で設定する会社

1. 実態に合わない目標設定

 (1) 市場環境の変化を考慮していない

前年の売上や利益を基準に目標を決めると、市場環境の変化(景気、競争、顧客ニーズの変化など)を無視することになります。 

例えば、景気が悪化し業界全体の売上が落ち込んでいる場合でも「前年並みの売上を達成しろ」と指示されると、現実的でない目標となります。

 (2) 会社の成長戦略と合致しない

本来、会社の目標は「どのように成長するか」に基づいて決めるべきです。前年と同じ金額を目標とするのは、戦略的な成長計画がないことを示しており、組織としての成長を妨げる可能性があります。

 2. 予算管理が適切に行われない

 (1) 必要な投資ができなくなる

前年の金額を基準に目標を決めると、本来必要な設備投資や人材採用などの支出が考慮されないことがあります。 

例えば、「去年と同じコストで運営しろ」と指示されると、新しいプロジェクトに必要な予算を確保できず、競争力が低下します。

 (2) 無駄な支出が削減されない

前年の支出額を基準にすると、本来削減できるはずのコストを見直さずに、そのまま予算として計上することになります。結果として、非効率なコスト構造が改善されません。

 3. 従業員のモチベーション低下

 (1) 成果を出しても評価されにくい

前年の金額が基準になると、社員がどれだけ努力しても「去年より増えたかどうか」しか評価されません。市場や会社の状況を考慮しないため、適切な評価制度が機能しなくなります。

 (2) 無理な目標設定がプレッシャーになる

「前年より売上を増やせ」「前年並みの利益を確保しろ」という目標が、現場の実態を無視して設定されると、社員に過度なプレッシャーを与えます。特に、不況や競争激化の中で前年と同じ数字を求められると、達成不可能な目標になり、士気が下がります。

 4. 経営判断の遅れと硬直化

 (1) 適切なリスク管理ができない

前年の数字を基準にすることで、企業が直面するリスク(市場の変化、原材料価格の上昇、為替変動など)に柔軟に対応できません。経営の意思決定が遅れ、問題が発生してから対応する「後手の経営」になりがちです。

 (2) イノベーションが生まれにくい

前年の数字を基準にする会社では、「去年と同じことを続ける」ことが前提になります。そのため、新しいビジネスモデルや業務改善の取り組みが生まれにくくなり、競争力を失うリスクがあります。

 5. まとめ

前年の金額を基準に目標を設定する会社には、以下のような問題があります。

1. 市場環境の変化を考慮せず、実態に合わない目標になる

2. 予算管理が不適切で、必要な投資やコスト削減ができない

3. 従業員のモチベーションが低下し、生産性が落ちる

4. 経営判断が遅れ、リスク管理やイノベーションが停滞する

 → どう改善すべきか?

– 市場動向や事業戦略に基づいた柔軟な予算設定をする

– 前年実績ではなく、成長戦略や目標達成のために必要な投資を考慮する

– 適切なKPI(重要業績指標)を設定し、現実的で挑戦的な目標を立てる

– 従業員が納得できる評価基準を作り、成長を促進する

前年の金額をそのまま目標にするのではなく、「なぜこの金額が必要なのか?」を考え、根拠のある予算設定を行うことが、企業の成長と安定経営につながります。

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