1. 結果は必ずしも本人の努力や能力だけで決まるわけではない
ビジネスの成果には、個人のスキルや努力だけでなく、 環境要因や運 も大きく影響します。例えば、以下のような要因があります。
◇ 外部要因の影響
•市場環境: 景気が良ければ営業成績は自然と上がり、逆に不況ならどんなに努力しても成果が出にくい。
•業界のトレンド: 需要のある商品を担当した人は結果を出しやすいが、斜陽産業では困難。
•競争環境: 競争が少ない市場では結果を出しやすく、逆に激戦区では難しい。
例えば、AさんとBさんが営業をしていて、Aさんの担当エリアが成長市場、Bさんが低迷市場だったとします。AさんがBさんより売上を伸ばしたからといって、「Aさんの努力や能力が上だから」と結論づけるのは短絡的です。
◇ 内部要因の影響
•上司やチームのサポート: 優れた上司やチームメンバーに恵まれれば、個人の結果も向上しやすい。
•リソースの違い: 十分な予算や人員を与えられた人と、限られたリソースで戦った人では、成果に差が出るのは当然。
•与えられた仕事の難易度: 難易度の高いプロジェクトを担当した人は、成果が出るまで時間がかかる。
例えば、新規顧客開拓と既存顧客対応では、短期的な売上成果に差が出やすいですが、それを単純に「結果」だけで評価してしまうと、新規開拓を避けるインセンティブが働いてしまいます。
2. 短期的な結果だけを評価すると、長期的な成長が損なわれる
人事評価が「結果主義」に偏ると、社員は短期的な成果を優先し、長期的に会社の成長につながる行動を避けるようになります。
◇ 短期的な結果を求める弊害
•部下の育成を軽視する: 自分の成果を最優先するため、後進の指導に時間を割かなくなる。
•持続可能な成長を無視する: 短期的な数字を伸ばすために、無理な営業やコストカットを行い、長期的な利益を損なう。
•イノベーションが停滞する: 研究開発や新規事業は短期的な成果が見えにくいため、敬遠される。
例えば、営業担当者が「1年間の売上」だけで評価される場合、既存顧客に無理な契約を結ばせたり、将来のための関係構築を後回しにするリスクがあります。結果、翌年以降の売上が急落することも考えられます。
また、エンジニアや研究職でも、「すぐに成果が出るプロジェクト」ばかりに注力し、基礎研究や新技術の開発が疎かになる可能性があります。
3. プロセスを見ないと、不正やモラル低下を招く
結果だけを重視すると、「手段を選ばずに成果を出せばよい」という考え方が蔓延し、不正や倫理問題が発生しやすくなります。
◇ 結果主義が生む弊害
•不正行為: 例えば、営業ノルマ達成のために契約内容を偽ったり、不正な取引を行う。
•社内政治が横行: 上司に取り入ることで評価を上げようとする人が増える。
•ハラスメントの温床: 上司が短期成果を最優先することで、部下に過剰なプレッシャーをかけ、パワハラや無理な残業が増加。
実際に、過去には「結果主義」が原因で不正が発生した企業事例が数多くあります。例えば、大手金融機関が営業ノルマのプレッシャーから顧客に不正な金融商品を売りつけ、社会問題になったケースがあります。
4. チームワークを損ない、組織の崩壊を招く
ビジネスは個人ではなく、チームや組織の協力によって成り立っています。しかし、「結果主義」が強すぎると、個人主義が助長され、チームワークが破壊される危険性があります。
◇ 結果主義がチームに及ぼす悪影響
•情報共有をしなくなる: 自分の成果だけを重視するあまり、知識やノウハウを独占し、他のメンバーに共有しなくなる。
•他者の足を引っ張る: 他人が成果を上げると相対的に自分の評価が下がるため、足を引っ張るような行動を取る。
•協力を避ける: チームプレーよりも「自分だけの成果」を優先するため、組織全体の効率が悪化する。
例えば、営業部門が「個人の売上」だけで評価されると、顧客情報を隠したり、他のメンバーと連携せずに独断で動く人が増える可能性があります。その結果、チーム全体の成果が低下し、組織の競争力が落ちてしまいます。
5. 学習や挑戦が評価されず、成長機会を失う
「結果だけ」で評価する仕組みでは、社員が新しいことに挑戦しにくくなります。なぜなら、新しい試みは成功する保証がなく、リスクを取るほど短期的な成果が見えにくいためです。
◇ 挑戦しない組織の問題点
•社員が守りに入る: 失敗が評価されないため、安全な道ばかり選ぶようになる。
•イノベーションが生まれにくい: リスクのある新規事業やプロジェクトを避ける文化が定着する。
•学習意欲が低下する: 目先の成果しか求められないため、スキル向上や自己成長への投資が減る。
例えば、新しいマーケティング手法を試した結果、短期的に売上が下がったとします。しかし、長期的にはブランド価値の向上につながる可能性があります。それでも「結果だけ」で評価されると、その担当者は「もう新しい手法には挑戦しない」と思うようになります。
プロセスと成長を重視する評価が必要
「結果」を評価することは重要ですが、それだけでは不公平や弊害が生まれます。そのため、プロセスや長期的な成長も評価の対象とする仕組み を導入すべきです。
◇ 良い人事評価のポイント
1.プロセスも評価する: どのように成果を上げたか、努力や工夫の過程を重視する。
2.チームへの貢献を加味する: 単なる個人成績だけでなく、周囲への影響や協力姿勢を評価する。
3.長期的な成長を促す: 挑戦や学習を評価し、失敗からの学びも重視する。
このような評価制度がある企業ほど、持続的な成長が可能になります。
